白鬚橋を語る上で欠かせないのが、橋の東詰(墨田区堤通)に広がる「白鬚東地区防災拠点」の存在です。このエリアには、一般的な下町のイメージを覆す驚くべき都市防災システムが構築されています。
関東大震災において、木造家屋の密集と猛烈な延焼火災によって未曾有の惨劇を経験した江東デルタ地域。その教訓を踏まえ、東京都が1970年代から整備を進めたのがこの防災拠点です。白鬚橋の東側には、13階建ての高層都営住宅が18棟、全長約1.2kmにわたって隙間なく屏風のように連なっています。
この団地群は単なる集合住宅ではありません。万が一大地震が発生し、周囲の木造密集地域から大火災が迫った際、内部の避難広場(東白鬚公園)へ火が侵入するのを完全に食い止める「巨大な防火壁(遮火堤)」として機能するよう設計されているのです。住棟間には巨大な耐火シャッターが設置され、建物の屋上やベランダには火炎を冷却するための放水銃(ドレンチャー設備)がずらりと並ぶ光景は、まさに都市防衛の要塞と言えます。
このように、白鬚橋とその周辺は「オカルトの舞台」などではなく、数々の大災害を乗り越えてきた東京が世界に誇る「減災テクノロジーの最前線」なのです。