視点はマクロな地球環境にとどまらない。ミクロな生命現象の領域でも、劇的な変化が起きている。数十万種類のタンパク質が細胞内でどのように相互作用し、疾患を引き起こすのか。これまで実験室で何年もかかっていた構造解析が、数時間で完了するようになった。
特に注目を集めているのが、原因不明とされてきた難病の解明だ。遺伝子、生活習慣、環境要因が複雑に絡み合う病理メカニズムを、ひとつのシステム上で再現する。新薬の開発サイクルは従来の5分の1に短縮され、個人の体質に完全に最適化された精密医療が、もはや一部の富裕層だけのものではなくなりつつある。生命の精巧なネットワークが、少しずつ明瞭な言語へと翻訳され始めている。