メディア社会学やポピュラー音楽研究の観点から分析すると、日本レコード大賞が果たす役割は、単なる勝者決定戦にとどまりません。
現代の音楽市場はアルゴリズムによって徹底的にパーソナライズされています。各自の好みに合わせた楽曲だけがスマートフォンにレコメンドされる「フィルターバブル」の時代にあって、国民全体が同じ音楽を共有する機会は極端に減少しました。その結果、あるコミュニティで爆発的にヒットしている曲を、別の世代や層は名前すら知らないという「文化の分断」が常態化しています。
このような状況下で、日本レコード大賞のようなマス向け生放送アワードは、「普段自分が聴かないジャンルの優れた音楽と強制的に出会う場」として貴重な機能を発揮しています。SNS上で「初めて聴いたが歌唱力に圧倒された」「こんな素晴らしいバンドがいたのか」とトレンドが動く現象は、分断された文化をつなぎ止めるメディア装置としての価値を証明しています。
【プロの結論】音楽賞を楽しむ人・距離を置くべき人の判断基準
日本レコード大賞をはじめとする音楽アワードを視聴するにあたり、無用なストレスを感じず知的好奇心を満たすための判断基準を提案します。
- 深く楽しめる人:
- 生演奏オーケストラをバックにしたアーティストの一発勝負の歌唱力やステージ演出を楽しめる人。
- 自身の嗜好にとらわれず、今年の大衆文化や業界の文脈を俯瞰して知りたい知的好奇心旺盛な人。
- 審査結果そのものよりも、年末ならではのドラマやアーティストの人間模様に心を動かされる人。
- 一定の距離を置くべき人:
- 自分が推しているアーティストの受賞だけを絶対的目的とし、落選を不正や忖度と直結させてしまう人。
- SpotifyやBillboardの再生数ランキングと完全一致しない順位付けに対して強い拒絶反応を覚える人。
音楽に絶対的な優劣をつけること自体が不可能な営みであるからこそ、その選考過程に表れる時代の葛藤や制作陣の意図をメタ的な視点から読み解くことこそが、成熟したリスナーにふさわしい楽しみ方です。