ネット上の一部では、「2005年頃からCD不況が本格化し、音楽のヒット規模が縮小した」という論調が見受けられます。しかし、これはオリコンのCDシングル売上枚数という単一の指標のみを切り取ったことによる明確な誤解です。
第一の盲点は、オリコン年間集計期間の構造的なズレです。例えば、2005年11月16日にリリースされたレミオロメンの『粉雪』は、2005年のオリコン年間シングルランキングでは集計期間の関係から上位に入っていません。しかし、翌2006年の年間シングルランキングでは堂々の2位(約74万枚)を記録し、配信ダウンロードを含めると200万件以上というメガヒットを達成しています。発売年の数字だけを見て「2005年は大ヒットが少なかった」と結論づけるのは早計です。
第二の盲点は、レンタル市場と配信市場のピークです。2005年当時はTSUTAYAなどのCDレンタル利用率が非常に高く、CDを一度借りて携帯型音楽プレイヤー(初代iPod nanoが発売されたのも2005年9月)に取り込むライフスタイルが一般化していました。つまり、CDの購入枚数という数字の裏側には、その何倍ものリスナーが日常的に楽曲を聴き込んでいた実態が存在します。
したがって、2005年は「音楽が売れなくなった年」ではなく、「音楽の聴かれ方が多様化し、体感的な国民的ヒットが最も濃密に凝縮されていた最後の時代」と捉えるのが、データに裏打ちされた正確な歴史認識です。