子育て世代が最も神経を尖らせるのが、「赤ちゃんへのキスで虫歯はいつからうつるのか」という問題です。小児歯科医学において極めて重要視されているのが、乳臼歯が生え揃う生後19か月〜31か月(1歳7か月〜2歳7か月頃)の期間であり、これを「感染の窓(Window of infectivity)」と呼びます。
この時期はまだ赤ちゃんの口腔内フローラが未完成であり、歯のエナメル質も薄く未成熟なため、一度ミュータンス菌が侵入すると永久的に定着しやすい無防備な状態にあります。この「感染の窓」をいかに無菌・低菌状態でやり過ごせるかが、その後の生涯にわたる虫歯リスクを左右すると長年警告されてきました。
一方で、近年は過剰な神経質さに対する見直しも進んでいます。日本小児歯科学会が発表した見解でも、食器共有や回し飲みのリスクを極端に恐れて親子のスキンシップを断ち切ることよりも、砂糖の過剰摂取を控えることや、適切なブラッシング、フッ素塗布を行うことの方が虫歯予防において遥かに決定的な影響を持つと指摘されています。神経質になりすぎて家族間の愛情表現を委縮させる必要はありません。