昭和29年(1954年)に音楽教科書に掲載されて以降、本作は日本の音楽教育において欠かせない教材となりました。童謡・唱歌の枠組みで語られることが多いものの、音楽的な完成度は極めて高く、混声三部合唱や女声合唱の定番レパートリーとして今なお愛唱されています。
合唱楽譜としての「夏の思い出」は、主旋律の伸びやかさと、副旋律(アルトや男声パート)が織りなす繊細なハーモニーが特徴です。「霧のなかに」「夢見て咲いている」の部分で現れる絶妙な和音の移ろいは、尾瀬の朝霧が晴れていく瞬間や水面の揺らぎを見事に音像化しています。合唱指導の現場では、単に声を張るのではなく、「言葉の母音を美しく響かせ、情景を想起させる表現力」を養うための至高の課題曲として位置づけられています。