本場の讃岐うどんが他の追随を許さない最大の理由は、緻密なグルテン網の形成による「しなやかな弾力」と、瀬戸内海の恵みである「いりこ出汁」の黄金比にあります。香川県産業技術センターなどの研究データでも示されている通り、讃岐うどん特有の食感は、小麦粉に対して約40〜50%の加水率と適切な塩分濃度、そして伝統的な「足踏み」「熟成」の反復によって生み出されます。中心部まで均一に火が通りつつも外側は滑らかで、噛み締めた瞬間に押し返してくるようなグミのような弾力こそが、讃岐うどんの真骨頂です。
そして、麺の個性を極限まで引き立てるのが本場さぬきうどんのいりこ出汁の特徴です。香川県観音寺市沖に浮かぶ伊吹島産の白口煮干し(伊吹いりこ)を贅沢に使い、弱火で丁寧に水出し・煮出しを行うことで、魚特有の生臭さを一切排した澄んだ黄金色のスープが完成します。昆布のグルタミン酸といりこのイノシン酸が織りなす相乗効果は、醤油の角をまろやかに包み込み、一口ごとに深い余韻を残します。
店頭で提供される讃岐うどんの釜玉やぶっかけといった人気メニューも、この麺と出汁の基本構造があってこそ成立します。茹でたて熱々の麺に生卵と生醤油を絡める「釜玉」では小麦のダイレクトな甘みが際立ち、冷水で締めた麺に濃縮出汁をかける「ぶっかけ」では驚異的なエッジの立ち具合を堪能できます。シンプルな構成だからこそ、素材と職人技の優劣が一口で伝わるのです。