本作の恐怖と美しさを決定づけているのが、クリエイター・赤雑巾(Akazoukin)氏が手がけたミュージックビデオ(MV)の存在です。ドット調の素朴な線画で描かれる少女と、彼女の首に巻きつけられた「首輪」。この首輪が意味するものについて、ネットコミュニティでは長年にわたり白熱した議論が交わされてきました。
有力な考察のひとつが、「教育虐待・毒親による条件付きの愛情」説です。首輪は親から与えられた「良い子でいなさい」という無言のプレッシャーであり、テストで良い点数を取るたび、親の期待に応えるたびに、愛される代わりに首輪の締め付けが強くなっていく。息ができなくなるほど苦しいのに、それを外してしまうと親からの関心を失ってしまうという恐怖が、少女を拘束具へと縛り付けているという解釈です。
もうひとつは、「自己愛と過剰適応による自縄自縛」説です。首輪をはめているのは他人ではなく、主人公自身であるという見方です。「誰からも愛されない自分には価値がない」という強迫観念が首輪の正体であり、他者からの評価を追い求めるあまり、自分自身の生命力を削り取っていく。きくお氏本人はインタビュー等において特定の単一な正解を明示せず、リスナーそれぞれの解釈に委ねる姿勢を貫いています。この受け手自身の個人的な痛みを投影できる余白こそが、作品を不朽の名作に仕立て上げた最大の要因です。