1932年に開業した旧山王ホテルは、当時としては屈指のラグジュアリーホテルとして政財界人に愛されていた。だが1936年、反乱将校らによる二・二六事件が発生すると事態は一変する。戒厳司令官であった香椎浩平中将の指示や攻防が繰り広げられる中、ホテルは反乱軍の拠点として占拠された。この緊張感あふれる歴史的瞬間は、後年の映画『226』などの映像作品でもリアルに描き出されている。
太平洋戦争の終結に伴い、日本の命運は大きく動いた。敗戦直後の1945年、接収命令を下したのはGHQ(連合国軍最高司令官総司令部であった。率いたダグラス・マッカーサー元帥のもと、旧山王ホテルは米軍の将校宿舎および将校クラブとして利用されるようになる。かつての日本の高級ホテルは、一夜にして米軍の占領行政を支える前線基地へと姿を変えたのである。