『火垂るの墓』という作品において、「食べ物の描写」は生命そのもののメタファーとして機能しています。
アニメ映画で主役級の扱いを受けたサクマ式ドロップスは、缶を振る音やカラフルな色合いによって、幼い節子の無垢さと儚さを視覚的・聴覚的に演出しました。最後には缶の中にわずかに残った糖分を水で溶かして飲む姿が、観客の涙を誘います。
一方で原作のカルピスは、かつて当たり前に存在した「平和で満ち足りていた家族の温もり」を象徴しています。ドロップスが「妹へのささやかな慰め」であるならば、カルピスは「二度と戻らない幸福の象徴」。表現媒体の違いによって使い分けられた食のモチーフが、それぞれの作品の完成度を極限まで高めています。