ナス料理全般に付きまとう最大の誤解が「水に長時間浸してしっかりアク抜きをしなければならない」という古い固定観念です。
流通している現代の日本のナスは品種改良が進んでおり、昔の品種のような強いエグみや苦味はほとんど含まれていません。切った後に10分以上水にさらすと、組織が余計な水分を吸水してしまい、加熱時に油跳ねを引き起こす主因となります。さらに、ナス特有の紫色の色素成分であるポリフェノール(ナスニン)は水溶性であるため、長時間の浸水によって大切な栄養素が流れ出てしまいます。チーズ焼きにする際は、切ってすぐに調理するか、気になる場合でも水滴をキッチンペーパーで拭き取る程度で十分です。
もう一つの盲点は「油の吸わせすぎ問題」のメカニズムです。ナスが油を過剰に吸うのは、油の温度が低すぎる状態や、生の硬い組織のまま油の中で泳がせている時間帯です。油を最小限に抑えつつジューシーに仕上げる裏技として、焼く直前にナス全体にほんの少量の塩を振って軽く揉む、あるいは耐熱容器に入れて電子レンジ(600Wで約1分30秒)予熱を通しておく手法が極めて有効です。組織の水分が適度に活性化し、少量の油でも内部がムラなく蒸し焼き状態へと移行します。