男子バレーボール界において、リベロの存在価値を劇的に塗り替えたと言っても過言ではないのが山本智大選手です。イタリアやポーランド、ブラジルといった世界の屈強なビッグサーバーたちが放つ時速120キロ超のノータッチエース級サーブを、山本選手は涼しい顔でセッターの定位置へ返球します。なぜ彼のレシーブ技術は、世界のトップアナリストからも「世界一のディグ・レセプション能力」と絶賛されるのでしょうか。
現場取材や本人の語る技術論を分析すると、その秘密は「動体視力」や「反射神経」という抽象的な言葉だけでは片付けられません。決定的な違いは「プレ・インパクト(打球前)のポジショニング完了スピード」にあります。山本選手は、相手スパイカーの助走角度、肩の開き具合、トスとネットの距離から瞬時にコースを3〜4パターンに絞り込み、打球が放たれた瞬間にはすでに移動をほぼ完了させています。
さらに特筆すべきは、ボールコンタクト時の「脱力」です。強烈な打球に対して腕に力を入れて弾き返すのではなく、インパクトの瞬間に腕のクッションを効かせてボールの勢いを完全に吸収し、無回転の球筋へと変換します。当時の代表合宿や特番インタビューでも、「力で押し返そうとすればボールは弾かれる。いかに自分の面を安定させ、ボールのエネルギーを逃すか」と語っており、極限まで磨かれた力学的な合理性が、あの針の穴を通すような高精度パスを生み出しています。