五線譜上の位置が理解できても、それが実際のピアノ鍵盤のどこに対応しているのかが一致していなければ、スムーズな演奏は不可能です。ト音記号とヘ音記号を上下に並べた楽譜を「大譜表(だいふひょう)」と呼びますが、この大譜表の構造を把握すると、2つの記号の境界線と鍵盤の位置関係が一目で氷解します。
多くのピアノ初心者が「ト音記号とヘ音記号は全く別の言語」と誤解しがちですが、実際には連続したひとつの広大な音域を、人間の読みやすさのために上下2分割したシステムに過ぎません。その境界線に位置する架け橋こそが「中央のド(C4)」なのです。
上記のピアノ鍵盤との対応表が示す通り、ト音記号とヘ音記号の違いは音域の役割分担にあります。そして記号の形そのものにも決定的な意味が込められています。ヘ音記号の渦巻きの書き始め(太い点)は「第4線」からスタートし、その線の上下を挟むように2つの点が打たれています。この第4線こそが日本音名でいう「ヘ」、西洋音名でいう「F(ファ)」を示すヘ音記号ファの基準点です。英語でヘ音記号を「F Clef(Fクレフ)」と呼ぶのは、アルファベットの「F」の装飾文字から派生したデザインだからに他なりません。