ウェブ上の解説記事や園芸ブログには、科学的な観点から見て看過できない誤った言説が散見される。現場で失敗しないために、以下の3つの誤解を正しくアップデートしておく必要がある。
誤解1:「卵の塊を見つけたら、アブラムシの多い別の枝にちぎって移せばよい」
親切心から、卵が付着した葉をハサミで切り取り、アブラムシが大量発生している別の植物の枝にセロハンテープ等で貼り付ける行為が推奨されることがある。しかし、これは孵化率を激減させる危険な行為だ。切り取られた葉は急速に水分を失って萎縮し、卵に急激な乾燥ストレスを与える。さらに、葉の丸まりによって卵同士が押し潰されたり、カビが発生したりする原因になる。移動させるのであれば、葉を切り取らず、鉢植え同士を隣接させて枝葉を直接接触させるか、孵化して幼虫が動き出してから柔らかい筆の先などで慎重に移送するのが生物学的な正解である。
誤解2:「てんとう虫の卵を増やせば、アブラムシ被害は完全にゼロになる」
生物的防除(天敵利用)にはタイムラグがつきものである。てんとう虫の幼虫がどれほど旺盛に捕食するとしても、孵化するまでの3〜5日間、さらに幼虫が成長して大食漢になるまでの数日間は、植物のアブラムシ被害が一時的に拡大し続ける。生態系のバランス(天敵と獲物の個体数変動)が安定する前に植物の新芽が枯死しそうな重症ケースでは、天敵に頼り切るのではなく、筆でアブラムシを物理的に払い落とすか、気門を塞ぐタイプの無毒性粘着スプレー(デンプンや還元澱粉糖化物由来のもの)を局所的に使用して植物の体力を維持させるハイブリッドな管理が不可欠となる。