日本で同族支配が制度的に解体された一方、隣国の韓国では「チェボル(財閥)」が国家経済そのものを定義するほどの圧倒的な存在感を放ち続けている。その象徴がサムスングループだ。スマートフォンや半導体で世界を制覇したこの巨大帝国は、韓国の国内総生産(GDP)の約2割を占めるとも言われ、国民生活のあらゆる場面にその影を落としている。
韓国財閥の最大の特徴は、創業家一族がわずかな直接出資比率でありながら、網の目のように複雑な「循環出資」を駆使してグループ全体を絶対的に統治している点にある。サムスン電子のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)会長をめぐる度重なる司法リスクや経営権継承をめぐる法廷闘争は、まさにこの歪な支配構造と莫大な相続税負担が生み出した現代の権力闘争にほかならない。
歴代の韓国政府は、輸出主導の経済成長を達成するために財閥へ特権的な融資や税制優遇を集中させてきた。その結果、世界市場で戦える巨大グローバル企業が誕生した反面、中小企業の成長阻害や若者の熾烈な就職競争、格差の固定化といった深刻な社会歪を生み出すこととなった。「財閥なしでは国が立ち行かないが、財閥の暴走を止められない」というジレンマは、今なお韓国社会の根底を揺るがし続けている。