海軍本部の最高戦力である「大将」の面々は、尾田栄一郎先生自身が公言している通り、昭和を代表する大スター俳優たちがモデルです。ここでは歴代5名の大将と、そのルーツとなった名作映画の関係性を紐解いていきます。
赤犬(サカズキ) × 菅原文太(映画『仁義なき戦い』広能昌三)
現・海軍元帥である「赤犬サカズキ」のモデルは、映画『仁義なき戦い』シリーズで主人公・広能昌三を演じた菅原文太さんです。「徹底的な正義」を掲げる冷徹かつ苛烈な性格、広島弁をベースにした威圧感あふれる口調は、同作の緊迫感あふれるヤクザ映画のトーンそのものです。サカズキの誕生日である8月16日も、菅原文太さんの誕生日と完全に一致しています。尾田先生は単行本の質問コーナー(SBS)などで「世界で一番かっこいい男」として菅原さんへの強い憧れを語っており、赤犬はその熱烈な敬意から生み出された屈指の重厚キャラといえます。
青雉(クザン) × 松田優作(ドラマ『探偵物語』工藤俊作)
元海軍大将で現在は黒ひげ海賊団に身を寄せる「青雉クザン」のモデルは、伝説のアクションスター松田優作さんです。トレードマークであるパーマのかかった長髪やアイマスク、すらりとした長身痩躯のシルエットは、ドラマ『探偵物語』で松田さんが演じた私立探偵・工藤俊作を彷彿とさせます。「だらけきった正義」を標榜する飄々とした態度と、内に秘めた人間味ある信念のコントラストは、まさに松田優作さんが放っていた唯一無二のダンディズムの昇華です。誕生日も松田さんと同じ9月21日に設定されています。
黄猿(ボルサリーノ) × 田中邦衛(映画『トラック野郎 爆走一番星』ボルサリーノ2)
海軍大将「黄猿ボルサリーノ」のモデルは、名バイプレイヤーとして国民的人気を誇った田中邦衛さんです。顔立ちの特徴的な表情筋の動きや、間延びした独特の語り口「〜ねェ〜」は田中さんの名演そのものです。コードネームの「ボルサリーノ」は、映画『トラック野郎 爆走一番星』で田中邦衛さんが演じたライバル運転手「ボルサリーノ2」に由来しています。「どっちつかずの正義」を掲げ、掴みどころのない不気味な強さを見せる黄猿は、田中さんの持つ怪演の魅力が見事に落とし込まれています。誕生日も同じく11月23日です。
藤虎(イッショウ) × 勝新太郎(映画『座頭市』座頭市)
頂上戦争後の「世界徴兵」によって特例で大将に抜擢された「藤虎イッショウ」のモデルは、昭和の映画界の巨人・勝新太郎さんが演じた盲目の剣客「座頭市」です。盲目でありながら超絶的な抜刀術を操り、重力を自在に操る「ズシズシの実」の能力と仕込み杖を組み合わせて戦うスタイルは、まさに座頭市そのものです。「仁義ある正義」を重んじ、王下七武海制度の撤廃を主導するなど、権力や体制に阿らない反骨精神あふれる侠客の気質が色濃く反映されています。誕生日は勝新太郎さんと同じ8月10日です。
緑牛(アラマキ) × 原田芳雄(映画『浪人街』荒牧源内)
藤虎とともに世界徴兵で大将となった「緑牛アラマキ」のモデルは、無頼派の名優原田芳雄さんです。映画『浪人街』(1990年版)で原田さんが演じた浪人「荒牧源内(あらまきげんない)」がそのまま本名「アラマキ」の由来となっています。胸元を大きくはだけた着流しスタイルや、ワイルドな長髪、口にくわえた煙草といったビジュアルは、原田芳雄さんが放っていた圧倒的な色気と泥臭い野性味を忠実に再現しています。「世界貴族(天竜人)こそが神」と言い放つ過激な思想を持ちつつも、どこか憎めない人間臭さを漂わせる造形です。