進路選択において最も家庭環境を左右するのが、獣医学部の学費における私立と国公立の圧倒的な格差です。国公立大学は文部科学省の標準額に準拠しており、6年間の学費総額は約350万円で済みます。一方、私立大学は実験・実習費や高度な医療設備の維持費が加算されるため、6年間で約1,400万円から1,600万円以上の学費が相場となります。
私立大学へ進学する場合、学費だけで年間約250万円、初年度は入学金等を含め300万円近くが請求されます。これに加えて一人暮らしの生活費や教材費、国家試験対策費用がかさむため、親からの十分な経済的支援を受けられる層か、日本学生支援機構等の大型奨学金を背負う覚悟を持つ受験生に二極化しています。
さらに将来的なコストとして無視できないのが、臨床獣医師としての独立時にかかる動物病院の開業費用です。以前のように「小さなテナントを借りて診察台を置くだけ」では、高度化する現代の獣医療競争には生き残れません。デジタルレントゲン、超音波診断装置、生化学自動分析装置、手術用麻酔器やICUケージなどを一式揃えるだけで数千万円が消えます。
業界関係者の試算や取材データによると、テナント開業であっても最低3,000万〜5,000万円、土地を購入して戸建ての動物病院を新築・設備導入する場合は7,000万〜1億円超の初期投資が必要となります。多額の借入金を背負い、経営者として集客やスタッフ雇用に奔走するリスクをあらかじめ認識しておく必要があります。