作詞を手掛けた石本美由起は、「憧れのハワイ航路」や「矢切の渡し」など昭和の歌謡史に燦然と輝く名詩を残した巨匠です。『いなかっぺ大将』の歌詞においては、「一つとせ」「二つとせ」という日本の伝統的な数え唄のフォーマットを採用しながら、主人公・風大左衛門(通称:大ちゃん)の愚直な生き様を鮮やかに描き出しました。
「ひとつ 人より力持ち」「ふたつ ふるさと後にして」というフレーズには、青森から上京して柔道の修行に励む少年の覚悟とペーソスが同居しています。涙を流すときに目をグルグル回し、褌一丁で大暴れする大ちゃんのバイタリティは、当時の高度経済成長期における日本人のエネルギーそのものを象徴していました。
そして本作を語る上で欠かせないのが、大ちゃんの師匠であるトラ猫のニャンコ先生です。「〜でごんす」「とらしてもらうぜ」という独特の口癖や、柔道の極意であるキャット空中三回転のインパクトは絶大でした。名優・愛川欽也が吹き込んだ声の魅力と、ユーモラスな歌詞世界が融合することで、アニメ本編と音楽が見事な相乗効果を生み出していたのです。