山口洋子の詞世界を語る上で欠かせないもう一人の巨星が、昭和の大スター・石原裕次郎である。彼女が作詞を手掛けた「ブランデーグラス」は、グラスを傾ける男の哀愁と都会の情調を極限まで凝縮した大人のバラードとして、時代の象徴となった。
撮影所や銀座の夜を通じて親交を深めた石原裕次郎の醸し出す空気感を、彼女は緻密な言葉の重なりで表現してみせた。琥珀色の酒に映る切ない恋心を描いた歌詞は、映画のワンシーンのように鮮明なイメージを聴き手の心に焼き付ける。夜の街の空気を肌で知る彼女だからこそ書けた名曲であり、歌謡界における都市型ムード歌謡の完成形として今なお語り継がれている。