ネット空間には発達障害に関する膨大な言説が飛び交っていますが、取材を進めると、当事者や人事担当者を誤導する3つの大きな「誤解」が浮き彫りになります。
誤解1:「ADHDはクリエイティブ、ASDは天才プログラマー」というステレオタイプ
SNS上では「ADHDは起業家向きの天才肌」「ASDはイーロン・マスクのような超集中型エンジニア」といった美談が消費されがちです。しかし、臨床心理士は警鐘を鳴らします。こうした卓越した才能を発揮できるのは、極めて高い知的能力(高IQ)や恵まれた環境が合致した一握りに過ぎません。大半の当事者は、事務処理の破綻や人間関係の摩擦という、泥臭く地道な生活上の機能不全と格闘しています。「才能がない自分は発達障害ですらないのか」と落ち込む必要はまったくありません。
誤解2:「大人の発達障害は、本人の努力不足や親のしつけが原因」
未だに一部の職場で根強く残る精神論ですが、ADHDもASDも先天的な中枢神経系の機能の偏り(ニューロダイバーシティ/神経多様性)であり、親の養育態度や本人の根性論とは無関係です。「気合でメモを取る」「気をつけて集中する」といった精神論的アプローチは、二次障害(双極性障害、パニック障害、強迫症)を誘発する最大の引き金となります。
誤解3:「診断名がつけば、すべての問題が解決する」
心療内科で「あなたはADHDです」「自閉傾向があります」と告げられた瞬間、安心感から涙を流す人は大勢います。しかし、確定診断は「スタートライン」に過ぎません。薬物療法が存在するADHDであっても、薬がカバーしてくれるのは不注意や衝動性の3〜5割程度であり、抜本的なスケジュール管理や環境調整(外部記憶ツールの導入など)のスキル構築を行わなければ、現場の困難は解消されないのです。