「ガソリン代を浮かせたい」という理由から、ハイオク仕様のクルマにレギュラーガソリンを給油した場合、実際には何が起きるのでしょうか。現代の国産車や輸入車には、エンジンの振動からノッキングを検知する「ノックセンサー」が備わっています。レギュラーガソリンが燃焼して異常な振動を感知すると、エンジンコントロールユニット(ECU)が瞬時に点火時期を遅らせる「遅角制御(リタード)」を実行します。
このセーフモード的な制御により、ハイオク車にレギュラーを入れるとどうなるかといえば、日常の市街地走行で即座にエンジンが破壊される危険性は極めて低く抑えられています。しかし、本来の最も理想的なタイミングから遅らせて点火するため、明確なデメリットが発生します。
まず顕著に現れるのが、エンジン出力と加速性能への影響です。アクセルを踏み込んでも本来のトルクが立ち上がらず、登坂路や高速道路の合流で明らかなパワー不足を感じるようになります。さらに厄介なのが実燃費とガソリン代の差額比較において生じる逆転現象です。燃焼効率が落ちるため、同じ速度を維持するために余計にアクセルを踏み込む必要が生じ、実燃費はおおむね5%〜10%程度悪化します。
ここで見落としてはならないのが、取扱説明書に記載されている「ハイオク指定車」と「ハイオク推奨車」の文言の違いです。
「ハイオク推奨車」は、基本性能をフルに発揮するにはハイオクが望ましいものの、日常的にレギュラーを使用することも前提にECUのマッピングが設計されています。一方、欧州車(メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン等)や国産スポーツカーに多い「ハイオク指定車」は、ハイオク燃料の利用を絶対条件としています。欧州の標準ガソリンはオクタン価95(RON)であるため、日本のレギュラー(オクタン価90前後)を入れると設計許容範囲を大きく逸脱します。長期的な使用はカーボン堆積を早め、愛車の寿命とメンテナンス費用を跳ね上げる結果になります。