アメフラシをつついたり危険を感じさせたりすると、周囲の海水を濃い紫色に染め上げる液体を勢いよく噴出します。「毒液ではないか」と恐れられるこの現象ですが、実は巧妙に計算された化学的防御システムです。
アメフラシが紫の液体を出す理由は、主食として摂取しているアヤニシキやソゾなどの紅藻類(赤い海藻)に含まれる色素「フィコビリン」を体内の紫汁腺(しじゅうせん)に濃縮して蓄えているためです。天敵である魚やカニに襲われた際、目くらましとして視界を遮るだけでなく、アミノ酸由来の忌避物質を同時に放出することで捕食者の嗅覚や味覚を麻痺させ、食欲を減退させる効果を持っています。
この紫液自体に人間を害する強い毒性はありませんが、衣服や皮膚につくと落ちにくいため、観察時は過度な刺激を与えない配慮が求められます。