室内に仏壇がなく、窓を閉め切っているにもかかわらず香りが届く場合、真っ先に疑うべきは建物の給排気ルートと空気圧のバランスです。近年の高気密マンションやアパートでは、キッチンの換気扇を作動させると室内が負圧状態になり、玄関ドアの隙間、エアコンのドレンホース、ベランダ側の給気口から外部の空気を強力に吸い込みます。
「ベランダに出てみたら、数軒隣の部屋から微かに煙が流れていた」「廊下の共有スペースで近隣住民が線香をあげていた」という物理的な原因が全体の7割以上を占めます。屋外の空気の流れは複雑で、数百メートル離れた寺院や墓地からの風向きによって、ピンポイントで特定の部屋に香気成分が届くケースも珍しくありません。
また、過去にその部屋で線香が使われていた場合、壁紙やカーテンの繊維、エアコン内部の熱交換器に染み付いた油分・タール成分が、湿度の上昇(雨天時など)や急激な室温変化によって再揮発し、突如として匂いが復活することがあります。