ローランドの足跡を振り返る上で最大のターニングポイントとなったのが、2017年に行われた源氏名の改名劇です。ホスト界に足を踏み入れて以来、彼は旧芸名の東城誠(とうじょう まこと)として歌舞伎町にその名を轟かせていました。当時すでに年間売上1億円を軽々と突破し、業界トップクラスの知名度を誇っていた「東城誠」という完成されたブランドを、なぜ彼は突如として手放したのでしょうか。
その背景には、自らが身を置く業界の旧態依然とした構造に対する強烈な違和感がありました。歌舞伎町の伝統的な接客スタイルといえば、派手なコールを叫び、大量のアルコールを煽り、疑似恋愛の感情を揺さぶって売上を競い合うものが主流です。東城誠という名もまた、そうした「歌舞伎町のナンバーワンホスト」という既成概念の枠組みの中にありました。報道各社のインタビューや当時のドキュメンタリー番組において、本人は次のような述懐を残しています。
「東城誠のままでは、どれだけ売上を伸ばしても『ホストの中で一番すごい人』で終わってしまう。俺は既存のホストという文化そのものを変え、世界の誰もが知るアイコンになりたかった」
お酒を飲まず、知性とユーモア、圧倒的な気遣いだけで女性を魅了する。暴力的な煽り合いとは無縁の、洗練されたスマートなエンターテインメントへと歌舞伎町を昇華させる。その決意を具現化するためには、歌舞伎町的なニュアンスを色濃く残す「東城誠」の看板を自らの手で壊す必要があったのです。
新たに選んだ「ROLAND」という名前には、国境や性別、業界の壁を軽々と飛び越える普遍的な響きが込められています。中世ヨーロッパの騎士物語を想起させるような気高さと、カタカナ表記でもアルファベット表記でも直感的に記憶に残るシンプルさ。既存の枠組みから脱却し、「ジャンル:俺」を名乗るにふさわしい舞台装置として、この改名は必然の戦略でした。