谷村新司さんの原点を語る上で欠かせないのが、若い頃のアマチュア時代と、フォーク黎明期における挑戦です。高校時代からフォークソングに傾倒し、「ロック・キャンディーズ」などのバンド活動を経て頭角を現した谷村さんは、自らの理想とする音楽を具現化すべく新たな仲間を求めました。
そうして1971年、盟友である堀内孝雄(ベーやん)、そしてドラムの矢沢透(キンちゃん)とともに結成されたのが伝説のグループ「アリス」です。結成初期はヒットに恵まれず、機材車1台で全国の公民館やライブハウスを巡る過酷な下積み時代を経験しました。年間300本を超える過密なステージをこなし、地道にファンとの絆を深めていった歴史があります。
1977年の『冬の稲妻』で大ブレイクを果たしたアリスは、その後『涙の誓い』『ジョニーの子守唄』と連続ヒットを記録。そして1978年、ボクサーの栄光と挫折、引き際を描いたシングル『チャンピオン』でオリコン週間1位を獲得し、日本のロック・フォーク界の頂点へと登り詰めました。
谷村さんの重厚な低音と堀内孝雄さんの突き抜けるハイトーンボイスが織りなすツインボーカルは、唯一無二のダイナミズムを生み出しました。性格も音楽のルーツも異なる2人を、矢沢透さんがリズムと人柄で支える絶妙なトライアングル。互いを認め合い、ライバルであり最高の理解者であり続けた堀内さんとの友情は、谷村さんの生涯を彩るもっとも美しい物語の一つです。