井上陽水さんの代表曲ランキングを語る上で、必ず最上位に名前が挙がるのが1973年3月発売のシングル『夢の中へ』です。陽水さんにとって初のオリコンシングルチャートTOP10入り(最高順位は10位を記録)を果たし、同年にリリースされた歴史的名盤アルバム『氷の世界』への足がかりとなった記念碑的作品でもあります。
この歴史的名曲が誕生したきっかけは、意外にもスタジオでの切羽詰まった状況でした。当時、新曲の制作締め切りに追われていた陽水さんは、レコーディングスタジオ近くのホテルに缶詰状態となっていました。しかし、いくら頭を抱えてもアイデアが浮かびません。
「もう探すのは諦めて、夢の中にでも行こうか」という極限状態の開き直りと脱力感から、あの象徴的なリフレインが即興的に湧き上がったと伝えられています。プレッシャーから逃避したいというリアルな衝動を、卓越したポップセンスで昇華させたからこそ、時代を経ても色褪せない普遍的なマスターピースが完成したのです。