杉村尚美の音楽的ルーツは、1970年代のフォークシーンに遡ります。彼女は本名名義に近い榊原尚美として、武田清一、中村幸雄らとともに1972年にフォークグループ「日暮し」を結成しました。澄み切った高音と情緒豊かなボーカルは結成当初から業界内で高い評価を受けていました。
日暮しの名を一躍全国区にしたのが、1977年にリリースされたシングル『い・に・し・え』です。TBS系ドラマの主題歌にも採用されたこの曲は、古都・京都の情景を舞台にしたノスタルジックな名曲で、オリコン14位を記録。フォークとポップスを融合させた洗練されたサウンドと、榊原尚美の哀切を帯びた透明感ある歌声は、多くのファンを魅了しました。
グループは1979年末に惜しまれつつ解散しますが、彼女の卓越した歌唱力を惜しむ声は根強く、レコード会社からの熱烈なオファーを受けて芸名を「杉村尚美」へと改名。1981年のソロデビューへとつながっていきました。彼女のボーカルは、ビブラートに頼りすぎない真っ直ぐなピッチ感と、聴き手の心に染み入る中高音域の倍音成分が特徴であり、スタジオミュージシャンやアレンジャーからも「一発録りでも完璧なテイクを残すプロ中のプロ」と絶賛されていました。