本作のメガホンをとる黒沢清監督は、これまで世界中の映画祭を震撼させてきたサスペンスや心理描写の第一人者だ。その名匠が日本の伝統的なジャンルである時代劇に本格挑戦するとあって、世界中のシネフィルが息をのんで注視している。
黒沢監督が今回目指したのは、過去の様式美を単に踏襲する時代劇ではない。スクリーンを覆う陰影、風の音、登場人物たちの湿り気のある情念。暗闇の中に潜む人間の孤独と業を恐ろしいほどのリアルさで炙り出している。「殺陣のための殺陣」を排除し、命が奪い合われる生々しい瞬間を描き切ることで、伝統的な歴史劇に鋭利な現代的解釈を突きつけた。