朝6時、静まり返った厨房で作業は始まる。利尻昆布と厳選された本枯節がじっくりと火にかけられ、澄み切った黄金色のスープが立ち上る。この出汁こそが、すべての料理の骨格をなす生命線だ。
「時代が変わっても、ベースとなる味の黄金比だけは変えない」。そう語る三代目店主の表情には、揺るぎない誇りが漂う。一方で2026年に入り、同店は新たな試みを開始した。伝統の製法をベースにしつつ、植物性素材のみで深みを出す「ヴィーガン出汁」の開発に成功したのだ。伝統の味を損なうことなく、多様化する世界中の食習慣に対応する柔軟性。この果敢なアップデートこそが、老舗の地位を盤石にしている。