ネット上では「これからは公立中高一貫校一択」「私立に高い金を払うのは無駄」といった極端な意見も見受けられる。しかし、教育ジャーナリストとして現場を取材する立場から警鐘を鳴らしたいのは、公立併設型中高一貫校特有の構造的ジレンマだ。
第一の盲点は、「高校からの外進生との合流問題」である。愛知県の県立中高一貫校は、完全中高一貫校ではなく、高校募集も継続する「併設型」を採用している。中学からの内進生80人に対し、高校からは厳しい一般入試を勝ち抜いた200〜280人前後の外進生が入学してくる。私立一貫校のように「高校2年終了時点で高校範囲をすべて終わらせ、高3の1年間を受験演習に充てる」という極端な先取りカリキュラムを公立で完全に導入することは制度上困難を伴う。内進生と外進生の進度調整やクラス編成において、学校側が手探りで対応している部分があることは否めない。
第二の盲点は、「教員の定期異動」という公立校特有のルールだ。私立校であれば、その学校の教育理念や独自の大学合格ノウハウを数十年かけて蓄積した専任教員が伴走してくれる。しかし公立校の場合、いくら附属中とはいえ教員は公務員であり、数年で他校へ異動する。先進的な探究カリキュラムを導入しても、それを指導する教員の質が異動によって変動するリスクは常に存在する。
「公立に入れば塾なしで東大・名大に行ける」という言説も幻想に近い。実際には、早期から大学入試を見据えた先取り学習を補うため、中学入学後も河合塾や駿台、東進などの大学受験予備校へ通塾する生徒が半数近くを占める。学費が抑えられる一方で、塾費用を含めたトータルコストで考えると、手厚い補習と指名講習を校内完結で提供する私立難関校との差は、世間で喧伝されるほど単純ではない。