群馬県政界における直近最大の激震といえば、2024年2月に行われた前橋市長選挙の結果であることに異論の余地はありません。自民党・公明党の推薦を受け、山本一太群馬県知事も前面に出て全面支援した現職の山本龍氏に対し、無所属で挑んだ弁護士の小川晶氏が60,486票を獲得し、現職に約1万4,000票もの大差をつけて圧勝しました。
選挙戦の現場を取材した地元記者や選挙プランナーの証言によると、勝敗を分けたのは「保守対リベラル」のイデオロギー闘争ではなく、長引く組織支配に対する有権者の明確な忌避感でした。前橋市役所周辺や市民集会で聞かれた声の多くは、デジタル化や大型開発を声高にアピールする行政と、身近な子育て環境や物価高に苦しむ生活実感との乖離に対する不満でした。小川氏は弁護士としての相談実績と県議4期の草の根ネットワークを活かし、「市民目線の対話」を掲げて無党派層や女性層を急速に取り込みました。
就任後の小川体制において最も注視されてきたのが、県政トップである山本一太知事との関係性です。選挙戦中に激しい対立構図が作られたため、県と市町村の連携不全が懸念されました。しかし、小川市長は記者会見や公の場において感情的な摩擦を徹底して避け、実務主義に徹した政策折衝を重ねています。児童手当の拡充や給食費無償化の段階的推進など、暮らしに直結する公約の着手状況は市民の間で好意的に受け止められている一方、自民党系が過半を占める前橋市議会との予算調整では、常に綱渡りの議会運営を強いられています。