沼津深海水族館のもうひとつの主役が、駿河湾の恩恵をダイレクトに反映した生体展示群です。なかでもSNSで絶大な人気を誇るのが、パラシュートのような愛らしいフォルムで知られる「メンダコ飼育展示」です。
ただし、メンダコを鑑賞するには一定の知識と運が必要です。メンダコは水深200〜1000メートルに生息し、光や水圧の変化、水質の微細な揺らぎに極めて敏感な超デリケート生物です。水族館関係者の間でも「長期飼育は至難の業」と評されており、海が荒れて深海底引き網漁に出られない時期や、高水温期である夏場には展示自体が休止されるケースが少なくありません。運良く生きたメンダコがフワフワと水中を漂う姿に出会えたなら、それだけで沼津を訪れた価値があると言えます。なお、メンダコの展示水槽前ではカメラのフラッシュや強いスマートフォンの光は厳禁となっているため、見学時の配慮が欠かせません。
一方、一年を通じてどっしりとした存在感で来館者を迎えてくれるのが「ダイオウグソクムシ」です。水深数百メートルの暗黒世界で有機物を食べ尽くす「深海の掃除屋」は、水槽の底でじっと静止している姿すら異様な威圧感を醸し出しています。腹部の脚の構造や硬い甲羅の継ぎ目まで間近で観察できる構造になっており、未知のクリーチャーを目の当たりにするような興奮を味わえます。