物語の核心に鎮座する1枚の絵画『白梅カキツバタ図』。千昭が歴史を変えるリスクを冒してまで過去へやってきた目的は、未来の世界では焼失してしまったこの作品を自分の目で確かめることだった。真琴の叔母である芳山和子が修復を手掛けていたあの絵こそが、過去と未来を物理的に繋ぐ唯一の触媒と言える。
千昭が自らの時代へと持ち帰ることができなかったその絵を、未来の時代まで大切に残し続けること。それこそが、真琴に託された目に見えない真の役割だったのではないか。文化財として絵画が時を超えて未来へ受け継がれていくプロセスそのものが、真琴から千昭へと届けられる愛の証明だったとする説は、根強い支持を集め続けている。