在宅介護の現場で最も頻繁に見られる間違いが、「硬いものは細かく包丁で刻めば食べられるはず」という思い込みです。実は、この刻み食こそが喉周りの筋力が落ちた高齢者にとって非常に危険な罠となります。
細かく刻まれた食材は、口の中でまとまらず散らばりやすくなります。歯がない状態では、舌を使って食材をひとまとめの塊(食塊)にまとめる作業が難しく、散らばった破片が息を吸い込んだ拍子にそのまま気管へと滑り込んでしまうのです。
刻み食を作る際は、刻んだ後に「あんかけ」や「マヨネーズ」「ホワイトソース」などを絡めて全体をまとめる工夫を忘れてはいけません。そこで頼りになるのが「とろみ剤(嚥下補助食品)」です。しかし、このとろみ剤も分量や混ぜ方を誤ると、ダマになって喉に引っかかる危険があります。
とろみ剤を使いこなすコツは極めてシンプルです。
まず、汁物や飲料にかき混ぜながら少しずつ振り入れ、ダマを作らないように素早く20〜30秒ほど攪拌します。その後、すぐに口へ運ばず、2〜3分ほど置いて状態を安定させるのがポイントです。時間が経つにつれて徐々に粘度が増すため、最初に入れすぎると硬くなりすぎて喉を通りにくくなります。薄いポタージュ状を目指すのか、スプーンからぽたぽたと落ちる程度にするのか、食べる人の嚥下レベルに合わせて慎重に濃度を見極めましょう。