大溝清人の芸人としての唯一無二の飄々とした佇まいを語る上で欠かせないのが、福岡市東区での壮絶を極めた生い立ちです。
物心ついた頃に両親が離婚し、父親が連れてきた再婚相手の女性も突然失踪。最終的に清人を引き取り、育て上げたのが全盲の祖母でした。雨漏りで天井が抜け落ちそうな長屋での暮らしは極度の貧困状態にあり、十分な食料がない日々も珍しくありませんでした。
この幼少期の過酷な日々と祖母への思慕は、自著『ばあちゃん、オレ、芥川賞とったで』でも赤裸々に綴られています。盲目の祖母が手探りで炊飯し、孫のために必死で食事を用意してくれた情景や、貧しさを恥じることなく笑いに変えて生き抜いた経験は、清人の人間味と哀愁を帯びた笑いの原点となっています。
荒れた思春期を過ごし暴走族へと足を踏み入れたものの、心の奥底で常に祖母への感謝を失わなかった清人。その人間的な深みが、バラエティ番組での毒舌の中にもどこか憎めない温かさを生み出していたことは間違いありません。