沖縄のしま言葉(方言)で「ヒートゥー(ヒートゥ)」と呼ばれる生物は、主にコビレゴンドウやオキゴンドウといった小型のクジラ類、およびイルカ類全般を指します。標準和名ではクジラとイルカに分類が分かれるものの、生物学的には同じハクジラ類の仲間であり、体長およそ4メートルを境に便宜上呼び分けられているに過ぎません。沖縄の海辺では古来、これらを総称して親しみを込めてヒートゥーと呼んできました。
このヒートゥーと最も深い結びつきを持つのが、沖縄本島北部の中心都市・名護市です。名護湾はすり鉢状の穏やかな地形をしており、古くから回遊してくる小型鯨類が迷い込みやすい天然の要所でした。琉球王国時代の記録にもヒートゥー捕獲の記述が見られ、明治から大正、昭和にかけては「名護のヒートゥー狩り」として全国的にも知られる一大風物詩となりました。
当時のヒートゥー狩りは、現代の近代捕鯨とは全く異なる地域総出の共同作業でした。湾内に群れが入ると、監視役の合図とともに「ヒートゥーが来たぞ!」という叫びが街中に響き渡り、漁師たちはサバニ(伝統的な木造船)を一斉に漕ぎ出しました。船べりを櫂(かい)や石で叩いて水中音を響かせ、音に敏感なヒートゥーを浅瀬へと追い込む「追い込み漁」です。浜辺には老若男女が集まり、引き揚げられたヒートゥーは解体された後、漁に参加した家々や地域住民へ平等に分配されました。
冷蔵設備のない時代、痩せた土壌が多く農作物の収穫が不安定だった島において、一度に大量の肉と油をもたらすヒートゥーは、まさに「天からの授かりもの」であり、飢えから人々を救う貴重な生命線だったのです。