ネット上には「アンティーク家具は修理すれば必ず価値が上がる」という言説が流布している。これは大きな誤解だ。2026年現在の市場では、修理費が査定額を上回る「逆ざや」が珍しくない。特に問題となるのは、「作家・年代が特定できない家具」と「修復履歴が文書化されていない家具」の2類型である。
修復職人への取材で明らかになったのは、「同じ修理でも、作家物か無名物かで市場の評価は3〜10倍変わる」という現実だ。たとえば、葛飾北斎と同時代の無名指物師による箪笥と、特定の工房が手がけたと証明できる箪笥では、同じ修理内容でも買取時の付加価値が全く異なる。にもかかわらず、多くの一般ユーザーは「古ければ古いほど価値がある」と誤認している。
もう一つの盲点は「修理見積もりの無料診断」の落とし穴だ。無料で見積もりを出す業者の中には、分解後に「想定外の損傷があった」として当初見積もりの2〜3倍を請求するケースが報告されている。国民生活センターには2026年度、家具修理に関する相談が前年度比18%増で寄せられており、その約4割が「見積もり金額の変動」に関するものだった。信頼できる業者を見極めるには、「分解前の段階で費用上限を明示するか」「追加費用発生時の連絡体制を書面で交わすか」を確認すべきである。