能登半島地震が突きつけた極めて重大な事実の一つが、「元旦や祝日に発生する災害には、平日とは全く異なる固有の脆弱性が存在する」という点です。防災計画の多くが平日の昼間や在宅時を想定して策定されているのに対し、元旦という特殊な環境下では想定外の事態が連鎖しました。
第一の盲点は、帰省に伴う建物の耐震性能のギャップです。都市部の耐震性の高いマンションに住む現役世代が、築年数の経過した木造の実家へ一斉に里帰りしていたタイミングでした。能登地方の伝統的な家屋は、日本海からの強風や雪に耐える重厚な瓦屋根と広い間取りを特徴としていましたが、耐震補強が未施工だった家屋が多く、集落全体で1階部分が押し潰される被害が多発しました。
第二の盲点は、行政・医療機関の「初動キャパシティの制約」です。1月1日は官公庁も病院も年末年始の当直態勢に入っており、平常時よりも初動人員が大幅に絞られていました。職員自身も被災者となる中、職員の招集、災害対策本部の立ち上げ、広域搬送の判断に時間を要しました。さらに、三が日の休業によって流通網が停止していたため、支援物資が現地に届くまで深刻な空白期間が生じることになりました。
第三の盲点は、生活火気の使用による火災リスクの急増です。元旦の夕刻は、雑煮の温め直しや夕食の支度、暖房器具の稼働など、多くの家庭で火が使われていました。地震の揺れによる器具の転倒や配管の破損が多発した上、断水によって消火栓が機能せず、輪島市中心部の大規模延焼火災へとつながる致命的な連鎖を生んでしまったのです。