SNSの労務担当者コミュニティや知恵袋等の相談窓口では、毎年6月下旬から7月にかけて「算定基礎届の数字が合わない」「日本年金機構から返戻(差し戻し)を食らった」という悲鳴が溢れかえります。現場の担当者が頭を抱えるミスの裏には、複合的な制度設計と日常業務の盲点が存在します。
現場取材から浮き彫りになった「ミスの決定的な理由」は主に3点に集約されます。
理由1:締め日と支払日の認識混同による対象月の誤認
前述の通り、算定基礎届は「支払ベース(現金主義)」で集計します。しかし、現場では会計上の発生主義に引きずられ、「4月勤務分だから4月の欄に書く」と誤解する担当者が後を絶ちません。当月末締め・翌月払いの企業において、3月稼働分(4月支給)を除外して6月稼働分(7月支給)を集計に入れてしまうミスは、日本年金機構の点検調査でも毎年ワースト上位に挙がる典型例です。
理由2:非課税通勤費の混入・除外の判断ミス
所得税法上、通勤手当は月15万円まで非課税とされていますが、社会保険における「報酬」には所得税の非課税枠は一切関係ありません。全額が保険料算定の対象です。「源泉徴収票の課税支給額」を給与台帳からそのまま転記してしまった結果、通勤手当が丸ごと抜け落ちてしまい、年金事務所から訂正を求められるケースが極めて多く見られます。
理由3:欠勤控除がある月給者の支払基礎日数の算定ミス
月給制であっても、欠勤控除の規定がある会社で従業員が体調不良等により欠勤した場合、所定労働日数から欠勤日数を差し引いた実労働日数を「支払基礎日数」としなければなりません。就業規則で「月給者は暦日数(30日や31日)とする」と定めていても、欠勤があった月は暦日数から欠勤日数を控除した日数が支払基礎日数となります。これを機械的に「30日」と記入し、報酬額だけが欠勤控除で大幅に下がっていると、算定対象月としての妥当性が損なわれ、返戻の原因となります。