インターネット上の掲示板やSNSでは、「瞬間接着剤で銀歯を戻したら何年も持っている」「医療用と成分が似ているから市販の接着剤で十分」といった危険極まりない誤情報が今なお散見されます。しかし、市販接着剤がNGな理由には、取り返しのつかない生体リスクが存在します。
市販の瞬間接着剤に含まれるシアノアクリレート系化合物は、硬化する過程で強い発熱反応を起こし、ホルムアルデヒドなどの有害物質を微量に放出します。密閉された歯の内部でこの化学反応が起きると、生きている歯髄組織が化学熱傷を負い、劇症型の歯髄炎を惹起します。激痛に襲われるだけでなく、健康だった神経を完全に死滅させる主因となるのです。
さらに深刻なのは、歯科用器具では容易に除去できない頑固な被膜が歯面と詰め物の双方に癒着することです。歯科医院で治療をやり直す際、固着した市販接着剤を削り落とすためだけに、貴重な健全歯質を大量に切削しなければならなくなります。また、素人の手による不完全な接着では、ミクロ単位のズレによって咬合高径(噛み合わせの高さ)が狂い、顎関節症や頭痛、対合する反対側の歯の破折を誘発します。わずか数百円の接着剤で応急処置を試みた結果、数十万円の自費治療や抜歯に至るという本末転倒な事態を決して招いてはなりません。