インターネット上の掲示板やSNSでは、一時期「ヴィラクゥクゥが取り壊される」「管理されずに荒れ果てているのではないか」といった真偽不明の情報が飛び交いました。なぜこのような誤解が定着してしまったのでしょうか。
背景には、2010年代後半から2021年のオーナー交代に至る移行期間の「沈黙」があります。所有者継承のデリケートな協議が進められている間、対外的な情報発信が途絶え、老朽化対策のシートが張られた時期がありました。これを遠目から見た通行人やネットユーザーが「解体工事の前触れではないか」と推測し、SNS上で拡散されたことが噂の火種でした。
また、吉阪隆正の建築が持つ特有の質感も誤解を生みやすい要素です。野性味あふれる打放しコンクリートや自然のツタ、経年変化を肯定する設計思想は、手入れの行き届いた新建材の住宅を見慣れた層からすると、一見して「古びて傷んでいる」ように映ってしまうことがあります。
しかし現場の事実は全く異なります。2022年の修復では、コンクリートの中性化対策や雨仕舞の改善、木製建具の調整など、専門の技術者によって細部まで構造的リフレッシュが施されました。現在のヴィラクゥクゥは、放置された廃墟などではなく、60年以上の歴史を刻んだ風格をそのままに、万全のコンディションへと再生されています。