日進舘を検索すると浮上する「万座温泉 日進舘 心霊 噂」というキーワードに、宿泊を躊躇する読者もいるかもしれません。この奇妙な噂について、地元の伝承や過去の報道、宿泊記録を徹底調査したところ、具体的な心霊現象や重大事故が発生したという客観的事実は一切存在しませんでした。
この噂がインターネット上で一人歩きした背景には、山岳木造建築ならではの物理的環境が関係しています。日進舘は斜面に沿って増築を重ねてきた迷路のような複雑な構造を持ち、一部の棟は歴史を感じさせる木造回廊で結ばれています。夜間になると、万座名物の強烈な山風が屋根や窓を揺らし、木材特有の軋み音(家鳴り)が発生します。加えて、標高1,800メートルの濃霧と立ち込める硫黄の白い湯煙が相まって、深夜の薄暗い廊下で特有の幽玄な雰囲気を醸し出します。これらの物理現象と視覚的イメージが、感受性の豊かな宿泊客やネット上のオカルト愛好家によって誇張され、「心霊」というキーワードに変質したと分析されます。
また、設備の老朽化を「不気味」と表現する口コミが見られることも要因の一つです。硫黄ガスによる金属腐食の影響で、廊下や空調設備に年季が入っていることは事実ですが、それは活火山地帯の名湯を守り続けている証拠でもあります。