高い効果が期待できる反面、身体構造上のデメリットや注意すべきリスクも存在します。最も留意すべきは、息を強烈に吐き切る際に発生しやすい「怒責(バルサルバ効果)」に伴う血圧の急激な変動です。
口をすぼめて全身に力を込めながら呼気を絞り出す動作は、一時的に胸腔内圧および腹圧を急激に高めます。健康な成人であれば血管の弾力性によって問題なく適応できますが、以下に該当する方の独習や過度な実践は慎重な判断を要します。
- 重度の高血圧症を治療中の方:呼気時の瞬間的な血圧上昇が血管壁に過剰なストレスを与える危険性があります。
- 心疾患・脳血管疾患の既往がある方:胸腔内圧の上昇に伴う血流量の変化が心臓や血管に負荷をかける恐れがあります。
- 妊娠中または産後間もない方:極度の腹圧上昇は子宮や骨盤底筋群に過度な負担をかけるため推奨されません。
- 頸部や肩周囲の慢性筋緊張が強い方:呼吸のコツを掴めていない初心者は、腹部ではなく僧帽筋や首周辺に余計な力みが入り、緊張型頭痛や肩こりを悪化させるトラブルが見られます。
美木氏が近年、シニア向けや初心者向けに「椅子に座ったまま行うバリエーション」や「足の重心移動を重視したマイルドな呼吸法」を積極的に発信しているのは、こうした安全管理上の配慮と身体機能の多様性に応じるための実践的な進化と言えます。