タブレット純の本名は橋本康雄という。神奈川県の穏やかな環境で生まれ育った幼少期、彼はすでに同世代の子供たちとは一線を画す音楽的感性を芽生えさせていた。当時、家庭内で日常的に流れていた音楽や、数歳上の兄が家に持ち込むポップスやラジオ番組は、少年だった橋本康雄にとって最大の娯楽であり刺激だった。
兄が部屋で聴いていたレコードの音流、本棚に並ぶ雑誌の装丁――。兄が通過していくカルチャーの背中を追いかけるようにして、彼は次第に音楽の奥深い世界へと没入していく。押し付けられることなく、兄の趣味空間に自然と触れられた体験こそが、のちに開花する圧倒的なリサーチ力と嗜好の原点となったのだ。