中大兄皇子の歌と万葉集の真実|三山歌の解釈や額田王との謎を徹底解説

中大兄皇子の歌と万葉集の真実|三山歌の解釈や額田王との謎を徹底解説

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中大兄皇子の歌の中で、文学史・古代史双方から最も熱い議論の対象となってきたのが、大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)を題材にした「三山歌」です。奈良盆地南部に位置する三つの山を擬人化し、二つの山が一つの山を巡って妻争い(男争い)をしたという神話的モチーフが展開されます。

この歌の解釈を巡っては、江戸時代の国学以来、大きく二つの学説が対立してきました。

一つは、山々の性別を巡る解釈です。畝傍山を「女性」とし、男山である香具山と耳成山が奪い合ったとする通説に対し、本文の「畝傍雄男志(うねびをおし)」の表記から「畝傍山=男山」「香具山・耳成山=女山」とし、二女一男の争いと読む説も存在します。文字通りの三角関係の比喩として捉える視点です。

しかし、近年の歴史地理学や儀礼研究が提示する有力な見解は、単なる恋愛比喩にとどまらない「国土鎮魂と王権掌握の言霊歌」という政治的解釈です。中大兄皇子が飛鳥の地から近江へと遷都する際、あるいは大化の改新によって大和の支配権を確立した際、大和の心臓部である三山の神々を鎮め、その霊力を掌握するために詠まれた公的な呪術歌であったという構造が浮き彫りになっています。

山々を擬人化して戦わせ、それを皇子という至高の権力者が俯瞰して歌に封じ込める行為そのものが、「大和の大地を統べる絶対者」としての政治的宣言であったと考えられます。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。