大人になり自活できる経済力を得た遠野さんは、自身の生存を守るために実母との絶縁を決断します。連絡先を変更し、居場所を秘匿することで物理的な距離を取りました。世間からの「育ててもらった親を捨てるのか」という心無い批判に晒されながらも、彼女にとって絶縁は生き延びるための唯一の防衛策でした。
しかし、絶縁から数年後、事態は最も過酷な結末を迎えます。母親の自死という報せが届いたのです。対話による和解も、直接の謝罪を受ける機会も永久に失われました。遠野さんはテレビ番組のインタビューで、「母を憎みきれない自分」と「どれだけ傷つけられても母を求めていた自分」の間で引き裂かれる苦しみを涙ながらに語っていました。
一方、父親との関係もまた平坦ではありませんでした。幼少期に生き別れた実父とは長年疎遠であり、家庭内暴力の防波堤にはなり得ませんでした。また、実母の再婚相手である継父も、家庭内で激化する虐待を止めることはできず、遠野さんにとって家庭は常に「助けを求められない密室」であり続けたのです。