田作りを食べる際、その文化的背景を知ることでお正月の食卓はより味わい深いものになります。なぜ小さなイワシの乾物が、おせち料理の最上位に位置付けられているのでしょうか。
「田作り」という名称の由来は、文字通り「田んぼを作る肥料」としてカタクチイワシが使われていた歴史にあります。江戸時代、干したイワシを田畑の高級肥料として施したところ、米が五万石(ごまんごく)も大豊作になったという伝承から、「五穀豊穣」「豊作祈願」の縁起物として祝い膳に並ぶようになりました。
しばしば混同される「ごまめ(五万米/小万米)」と「田作り」の違いについても明確な定義があります。食材としての「乾燥させたカタクチイワシの幼魚そのもの」をごまめと呼び、それを炒って醤油や砂糖のタレで味付けした「料理名」を田作りと呼ぶのが一般的です。尾頭付きの小魚を丸ごと食すことから、「子孫繁栄」や「健康長寿」の願いも重ね合わされており、数の子・黒豆と並ぶ「祝い肴三種(関東)」として欠かせない存在となっています。