物語の深奥に君臨するカーツ大佐を演じたのが、名優マーロン・ブランドだ。しかし、彼の現場到着は新たなる波乱の幕開けに過ぎなかった。約束の体重を大幅にオーバーし、原作『闇の奥』すら読まずに撮影地に現れたブランドに対し、コッポラは途方に暮れた。
だが、この絶望的なアクシデントが歴史的名シーンを生み出す。コッポラはブランドの巨体を暗闇の中に隠し、頭部と手の輪郭だけを光で浮かび上がらせるライティング手法を考案。これがカーツ大佐の神秘性と恐怖感を飛躍的に高めた。劇中に散りばめられた伏線――川を遡るにつれて増していく無秩序と、カーツの王国に近づくにつれ聞こえる謎めいた囁きは、狂気へ至る不可避のプロセスを予言している。カットされた未公開エピソードや複数のエンディング案が存在する点も、本作が永久に未完成の輝きを放ち続ける理由だ。