生花店や庭先で見かける白ユリをすべて「カサブランカ」と呼んでしまうケースが散見されますが、これは植物分類上、明確な誤りです。カサブランカは無数にあるユリのひとつの品種に過ぎません。その誕生の歴史を知ると、なぜこの花が特別視されるのかがよく理解できます。
カサブランカは1970年代にオランダで作出されたオリエンタルハイブリッド(オリエンタル系百合)の最高傑作です。驚くべきことに、その交配の親となった原種は、日本固有種である「ヤマユリ」や「カノコユリ」「サクユリ」でした。日本の山野に自生していた野生の百合が海を渡り、ヨーロッパの育種技術によって極限まで大輪かつ華麗に品種改良された歴史を持ちます。
名前に含まれる「Casa Blanca」はスペイン語で「casa(家)」と「blanca(白い)」、すなわち「白い家」を意味します。特徴的なのはその咲き姿です。一般的なテッポウユリが横向きや上を向いてラッパ状に咲くのに対し、カサブランカはうつむき加減にやや下を向き、花弁の縁が優雅に外側へ波打ちながら大きく反り返ります。また、花弁の内側に赤や茶色の斑点が一切入らず、透き通るような純白である点も、女王と呼ばれる所以です。
なお、開花時期・見頃は露地栽培であれば6月下旬から8月の初夏から盛夏にかけてです。現在では温室栽培により年間を通じて流通していますが、最も生命力あふれる大輪を楽しめるのは初夏の季節となります。また、誕生花としては5月9日、7月31日、11月6日、12月21日などに割り当てられており、人生の節目を祝う記念日の花としても親しまれています。