ベーリング海の過酷さを象徴するのが、冬場に行われるタラバガニ(キングクラブ)やズワイガニ(オピリオ・ベアディ)の商業漁業です。
カニ漁船のデッキハンド(甲板員)の報酬は完全歩合制が多く、大漁に恵まれればわずか数週間から2〜3か月の航海で200万〜500万円以上、シーズンを通したトップクラスの船員や船長クラスであれば年収1500万〜3000万円超を稼ぎ出すことも珍しくありません。一攫千金を夢見る若者や屈強な海の男たちがアラスカの港町ダッチハーバーへと集まる理由はここにあります。
しかし、その対価はあまりに重いリスクの上に成り立っています。かつて米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が発表したデータによると、アラスカの商業漁業における死亡率は全米平均の約30倍〜40倍に達し、「最も命を落としやすい職業」として記録されていました。300キログラムを超える巨大な鉄製カニ籠(ポット)がクレーンで揺れる甲板での打撲・挟まれ事故、凍てつく海への転落(落水時の生存可能時間はわずか数分)、そして船自体の沈没など、一瞬の油断が生死を分けます。